「君の言うとおり、彼女が傷心していた時に側にいられなかったことは後悔している。これからはできるだけここに通うつもりだ」
「通わなくて結構です。僕がお嬢様を支えますし、王子殿下がパティスリーに頻繁に足を運んでいたらいつかは醜聞になってしまいます。これ以上お嬢様の名誉を傷つけないでください。それと彼女に色目を使わないでくれます?」
シュゼットとエードリヒが話している様子を観察していて分かったことが一つある。それはエードリヒがシュゼットへ向ける眼差しに恋情のようなものが含まれているということだ。
あれはシュゼットを一人の女性として見ている。幼馴染みに向ける眼差しではない。
ネルが人差し指を立てて指摘するとエードリヒは目尻の皺を深くする。
「君はシュゼットのことが好きなのだな」
「なっ……」
朗らかな微笑みを浮かべるエードリヒにしみじみと言われてしまい、ネルは毒気を抜かれた気分になった。
「あなたには関係ないことです」
はぐらかすようにそっぽを向いて言うとエードリヒが畳み掛けるように問う。
「関係ある。先程も言ったがシュゼットは私にとって大切な存在。子供の姿でシュゼットに近づいて懐に入り騙そうとしている者を見過ごすわけにはいかない。……なあアル殿、これを卑怯と言わずになんというのか、まほろば島の魔法使い直々に教えて頂けないだろうか?」
「……っ」
ぐうの音も出ないネルは頬をつっと引き攣らせた。
言われなくてもそんなことはネル自身が一番よく分かっている。



