――もしかしてネル君は自分の分がないと思っているのかしら? ふふっ、可愛いわね。
私はネル君の側に寄ると彼の肩にぽんと手を置いた。
「大丈夫よ、ネル君。あなたの分もちゃんとあるから。貯蔵庫にいるラナの分も用意するし。一緒に食べましょうね」
私が声を掛けるとネル君は頬を膨らませる。
「お嬢様が僕の分もきちんと用意してくれることは分かってます。ただ……」
「ただ?」
その先を促すとネル君は私を一瞥してから溜め息を吐く。
「……なんでもないです。クレープができあがるまで僕は王子様の話し相手をしています。イートインスペースで待っていますね」
「ありがとう、お願いするわね」
私がネル君に笑顔を向けると、ネル君は私に笑みを返す。が、王子様へと頭を動かした途端に真顔になった。
「……こっちですよ、王子様。僕についてきてください」
素っ気ない声で言うとエードリヒ様に背中を向けて歩き始める。
――やっぱりエードリヒ様のことを警戒しているの? こんな状況で二人きりにして大丈夫かしら?
頬に手を当てて不安を抱いていると、エードリヒ様が口をぱくぱくと動かして『心配いらない』と合図を送ってくれる。
彼の言うとおり、小さい頃は年下の私の面倒を見てくれていたから、子供の扱いは慣れている。ネル君も今は警戒しているけれど、そのうち打ち解けてくれると信じよう。
私が『お願いします』と頷くと、エードリヒ様はネル君の後を追いかけていった。



