没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~



 一人残された私は暫く経ってから小鍋の手入れを終えた。
「調理器具も綺麗になったし、次はカヌレのレシピを見直しましょう」
 私は最終段階に入っているカヌレのレシピが書かれたノートを作業台の上に広げた。
 いくら美味しいカヌレが作れても茶色い見た目のままだとお客様の食指は伸びない。
 うちのコンセプトである可愛いを体現するためにもトッピングは使いたい。だけど、トッピングした姿を想像すればするほど私の中でしっくりこなかった。
 その原因はこの間のアップルタルトにあるのかもしれない。

 私が食事のマナーで粗相をしてしまった時にアル様がアップルタルトは最初からシュトロイゼルがのっていたと言って助けてくれた。
 偶然の産物ではあったけれど、アップルタルトはシュトロイゼルをのせたことで売り上げが伸びた。わざと食べるのを難しくしたことで、万が一粗相をしても最初から食べにくいお菓子だから多少の粗相は仕方がないという認識が広まったのだ。
 そこから分かったことだけれど、食事のマナーを気にしている令嬢は意外と多いということだ。