甘くて優しい青春恋物語 ~一途なプレイボーイはワルい男へ方向転換?~

 思っていたよりも乾って男らしい……なんて、ぼんやり考えながら。

『……あんたがしたいなら、良いよ。』

『それは……どこまでしていいの?』

『だっ、抱きしめるまで! 変な事考えないでよね!?』

『ふふ、分かってるよ。』

 本当に分かってるんだか……。

 元プレイボーイの異名は、乾のどこまでもついてくる。

 振り払おうとしても、やめていても。どこかの拍子で、思い出してしまう。

 だから時々、躊躇ってしまう時もある。

 ……けど、それじゃきっと乾に対して失礼だ。

 乾は変わろうとしているんだし、だったら私はそんな乾の気持ちを大事しなきゃいけない。

 前の事は、引きずらなくていい。引きずっちゃ、ダメなんだ。

「おーい、杏どうしたの? ぼんやりしてるけど。」

「……な、何でもないっ。というか、近いってば……!」

「ダメなの?」

「ダメに決まってるでしょ!」

 私の心臓、すっごくうるさいっ……。

 乾にときめくなんて、四月の頃は思わなかったんだろう。むしろ、信じたくないってくらいまで思っていただろう。