さっき、理不尽に絡まれた時。

 あっちがわざとぶつかってきたのに、変な言いがかりをつけてきて。

 挙句の果てには乾との話も出されて……そんな時に助けてくれた、乾。

 まさかその場で男二人を成敗すると思ってなかったけど、それ以上にある感情が浮かんだんだ。

 今までは特に思わなかった感情。そして、初めて人の為に思った感情。

 ――怖い。

「こわかった……っ。乾がもしかしたら、危ない目に遭うんじゃないかってっ……! 私のこと、ほっといてくれてよかったのに何でっ……。」

 私みたいな身勝手な女、見捨ててれば良かったのに。

 自己中で可愛いさもなくて、面倒で嫌な女。

 それなのに助けてくれたのは、彼女だから……だろう。

 でも、それを否定してほしいって思う矛盾している自分も居て。

 “彼女だから”じゃなくて、“私だから”って言ってほしくて。

 ……本当は助けてくれたの、嬉しかったのに……っ。

「馬鹿っ、ばかばかっ……! 乾のばかっ……。」

「そんなに馬鹿って言われると、傷つくんだけど。」