その日からというもの、乾は圧倒的に“ワルい男”というものになってしまった。

 元はと言えば私が言い出した事なんだから、どうこう言える筋合いじゃないんだろうけど……。

「……杏ちゃん、最近乾君変だね。何かあったの?」

「あー……うん、あった。」

 乾の豹変っぷりはクラスメイト全員が分かっているらしく、その中で聞いてきたのが空音だった。

 どうしようか……きっかけを言うか、言わまいか。

 言ってしまっても良いけど、その場合絃たちの話をしなきゃならなくなる。

 そうすると実涼ちゃんが絡んでくるから、なかなか言い出せずにいた。

「あったけど、言いにくい。」

「えー、教えてよっ。きっと面白い事なんでしょ? 私、聞きたいなぁっ。」

「……ダメ。これは言いづらいの。」

「そっか……それなら仕方ないね。」

 あれ、思ってたよりもあっさり引いてくれた……。

 こういう時空音はいつも「教えてよ!」の一点張りで、絶対に引かないのに。

 今回の態度が珍しくて、つい拍子抜けしてしまう。