「これから覚悟しろよ、杏。」

 という、獣っぽい危険さを含めた声色で囁かれる。

 ……私、墓穴を掘ったかもしれない。

 ここまで完璧に“ワルい男”を演じるとは思っていなくて、ドキドキが限界突破しそう。

 静まれ、私の心臓……!

 そう願ったって、無理なものは無理で。

「や、やれるものならやってみなさいよ……!」

 私はまたもや、そんな気持ちを隠すように煽り口調でそう言ってしまった。