「それじゃあね、また明日。」

「うん。またあし――ひゃっ。」

「あはは、毎日してるのに未だに慣れてないの?」

「……こういうのは、慣れる慣れないの問題じゃ……。」

 放課後、私は乾に送ってもらって帰ってきた。

 正式に付き合い始めた時からの習慣のようなもので、理由は私が襲われないようにする為……らしい。

 襲われるって……私、弱くないのに。

 よくそう思うけど、厚意を無下にするのはよろしくない。

 自分にそうやって言い聞かせながら、今日も乾は私の頬にキスを一つ落とす。

 それに私はずっと、慣れないでいるのだ。

 もちろん、慣れるなんて微塵も思っていない。乾がグイグイ来すぎなだけ。

 だけども私の嫌な事は絶対にしないし、止めたら大抵は止まってくれる。

 ……今日だけは多分、例外だったけど。

「そーだよねぇ。杏、初心だもんね。そーゆーとこ、ほんと好き。」

「か、からかわないでよっ。ていうか私、初心じゃないしっ!」

 どこが初心だと言うのだ。私は決して、初心という可愛い部類に入る人間じゃないっ。