更に暗い方向へ進んでいくその人。おかしい。さっきの場所は、もっと明るくて人通りも多かった。多分この人、嘘を吐いてる。
「あの、やっぱりいいです。私、帰ります」
「……なんで?」
「えっとここらへん、西垣事務所じゃない、ですよね」
「……」
無言になったその人。でも、じりじりと距離を詰めてくるのが分かる。
後ずさったタイミングで、その人は私に追いついた。
「ちょ、やめてください!」
「はは、気づかなければよかったのに」
背中を無理やり掴まれて、引きずられながら進んでいく。
……ああ、私岡村くんのときから学習してないかも。っ、違うっ、
「っ、助けてください、!」
私にしては人生で1番大きいんじゃないかっていう声で叫ぶ。



