足を早めるけど、道が沢山枝分かれしていて、どこから来たのかさえ忘れてしまった。
高校生にもなってちょっと怖くなってきた……。
周りに人はいると言えばいるけど、さっきの所より全然少ないし、男女2人の人達が多い。
話しかけられる雰囲気ではなさそうな人達ばっかりで。
どうしよう……。
「ねえ、君。なんか困ってる?」
「え?あ、ちょっと迷子になってしまって……」
話しかけてきたのは、1人でいる若い男の人。白い歯を見せて笑う、気さくそうな人。
「そっか。どこに行きたいの?」
「えっと、西垣事務所に行きたくて、」
「ああ、それなら僕の事務所だよ?僕、スカウトマンなんだー」
名刺を差し出してきたその人。そこには「西垣事務所」の文字。



