(影沼さんは…仕事ができるし、LOSKAも守るって言ってくれた…)
茉白はベッドの中で、影沼からのプロポーズのことを考えていた。
(LOSKAを守る…)
Amselと仕事で絡むことはLOSKAにとってプラスになっている。影沼と結婚すれば、おそらくさらに結びつきが強くなり、AmselのコスメのノウハウでLOSKAは業績を伸ばしていくことを期待できる。

(…でも…)

(影沼さんと結婚してる自分が想像できない…)

(それに…)

(私自身がLOSKAのためにもっと頑張りたい…)

それが茉白の本音だが、縞太郎は茉白と影沼に結婚して欲しいのだろうと思うと、父を思う気持ちで揺らぐ。

そしてまた、遙斗の顔を思い浮かべてしまう。


翌週
「米良さん、お世話になっております。真嶋です。」
『茉白さん、どうされました?』
茉白は米良に電話をかけた。

「先日の商談でお渡しできなかった傘のサンプルなんですけど…」

『郵送していただく分ですね。』

「今日、営業でそちらの方を回るので、私が直接お届けしようかなと思います。」

『え、茉白さんが担いで来るんですか?』

「そんなわけないじゃないですか!車でお伺いします。受付の方にお渡しすれば大丈夫ですか?」
茉白はクスクスと可笑しそうに言った。

『お時間を教えていただければ、私が直接受け取りますよ。』

「本当ですか?ありがとうございます。では、後ほど。」

茉白は電話を切ると、社内のホワイトボードにシャルドンに立ち寄る予定を書き込んだ。

「茉白さん、今日の営業、同行させていただいても良いですか?」
そう言ったのは影沼だった。

「え…」
急な申し出に、茉白は少し躊躇(ためら)ったが、縞太郎からは影沼の一日の仕事内容は影沼に自由に決めさせろと言われている。

「わかりました。」