レイングッズの商談の日の夜

茉白は縞太郎に呼ばれ、リビングのソファに座っていた。
最近、こういうときは決まってあまり良くない話なので、茉白はつい身構えてしまう。

「何?大事な話って…会社のこと?」

「…会社のことでもあるし、茉白のことでもある。」
縞太郎は若干重たさのある口振りで言った。

(私のこと?)

「影沼君のことなんだが…」

「影沼さん?」
なんとなく、不安な気持ちになる名前だ。

「ああ。影沼君のことはどう思う?」

「どうって…うーん…仕事はできるっぽいよね。LOSKAの社内にも馴染もうと努力してくれてるし…悪い人では無いんじゃない?」
茉白はあまり関心の無い様子で答えた。

「嫌ってはいないと思っていいのか?」

「え…うん、まぁ…」
嫌うほどよく知らない、というのが本音だ。


「…それなら茉白、影沼君との…結婚を考えてみてくれないか?」


「………」
茉白の頭には縞太郎の言葉がすぐには入ってこなかった。

(ケッコン…)

「え!結婚!?」

茉白の声に、縞太郎は頷いた。

「え、ちょっと何言ってるの!?急にそんな…」
縞太郎の言葉を理解した茉白は、驚き、慌て、顔面蒼白になっていた。

「茉白は急だと思うかもしれないが、影沼君からはずっと打診されていたんだ。」

「え…?」
「どうも、例のパーティーで会ったときから、茉白を気に入ってくれていたようだよ。」
縞太郎はどこか嬉しそうに微笑んで言った。

「………」


(だとしても…どうして自分で言わないの?)