「はい…」

『雪村ですが。』

「は、はい…お世話になっております」

『うちの倉庫に納品に来てたって、米良に聞いた。わざわざどうもありがとう。』

「い、いえ、そんなお礼を言われるようなことでは…」
茉白はまた恐縮する。

『ところで真嶋さん』

「はい?」

『SNS舐めてんの?』
遙斗の口調が少し強くなる。

「え」

『あれから2ヶ月経ってるのにフォロワー5人てどういうことだよ。』
遙斗が言っているのは茉白がSNSを頑張ると言った朝7時の商談の日のことだ。

「う…米良さんにも言いましたけど、私こういうの向いてないみたいで…」

茉白は目の前のPCで自社のTwittyを開いた。

「あ!5人じゃないですよ、6人です!」

『5人も6人も変わらないだろ…。』
遙斗が溜息混じりの呆れた声で言う。

「全然違いますよ、16%増です!」

『………』

「…すみません。」

『2週間後』

「え?」

『2週間後にうちのアカウントで、今日入荷したLOSKAの商品を紹介する予定になってる。』

「わ、ありがとうございます!」

『タグ付けもするから、そのリンク先がフォロワー1桁だとうちが恥ずかしい。』

「え…」

『だから2週間でマシなアカウントにしろ。』

「え!無理です…!」
茉白は焦った声で言った。

『ちょっと見ただけでも改善できそうな点がいくつもあった。写真が暗い、文章が堅い、ハッシュタグの使い方がヘタ—』
「…だからセンスが無いんです!」
茉白は遙斗がダメな点を列挙するのに堪えられず被せるように言った。

『自分でやろうとするからだろ?雑貨メーカーなんだから、そういうのが得意な社員もいるだろ。自分一人で抱え込まない、使えるものはなんでも使う、真嶋さんの課題だな。』

「………」

『この後うちのSNS担当から、御社のデザイナーにこの件でロゴの手配依頼がいくから。そこに付いてる画像も参考にするといい。じゃ。』
それだけ言って、遙斗は電話を切った。