恋の毒

 私でも驚くほど、大きな声が出てしまった。


 高城君も驚いた顔をして私を見る。


「これから先、高城君と話したくないっていうのはウソじゃなくて……でも、高城君に私の小説を褒められて、私は前よりも、私のことを好きになれたから。だから、高城君と話せて、嬉しかった」


 高城君は満面の笑みを見せてくれる。

 だけどやっぱり、切なさが隠れている気がする。


 そうだ。

 私はこの笑顔の中に紛れた陰の気に惹かれたのだ。


 私は、自ら惹かれた存在を手放す。

 それも、よくわからない理由で彼を傷付けて。


「それはよかった。じゃあ俺は、これからも鳴海さんのファンでいるよ」
「ありがとう……」


 まだ泣くな。

 私に、泣く資格はない。


 落とした視界から、高城君の足が消える。

 徐々に遠ざかっていく足音。


 次第に波音しか聞こえなくなると、私はその場に膝を抱えて座った。


「ありがとう、高城君……ごめんなさい」


 静かに私の全身へと広がっていったこの毒は、しばらく抜けそうにない。


 でも、もう少しだけ、この毒の苦しさに溺れていたい。


 いつか、この痛みを小説に残せるようになるまで。