「っわ、何! 怖いんだけど!」
「だ、誰……?」
私と杏月は恐る恐る人影の方に視線を向けた。
頭のてっぺんから足のつま先までじっくり見ても、それが誰なのかはさっぱりだ。
杏月と目配せするも、私と同様その人が誰か分からないらしい。
ぼさぼさな前髪、分厚い黒縁眼鏡、きっちりと締められたネクタイ、平均的な身長。
「あ、あの……めちゃくちゃ失礼なのは承知の上で訊くんだけど、あなた、名前は?」
「あっ、えっ、ぼくですか……っ。え、えっと、た、滝口夜と言います」
「滝口くん? えーっと、待って、今思い出せそうな気がしてる……っあ! 君、入学式の日に生徒代表スピーチしてた子でしょ!」
「……っは、はい! そうです!!」
あ、そうだったんだ……すごいな杏月。私それを聞いた今でもいまいちパッとしないよ。
杏月曰く、滝口くんという人はマシンガントークをする杏月におどおどした様子で一生懸命相槌を打っている。
「君凄かったよねー。頭も良さそう」
「ぼ、僕がすご……!? いやいや、そんなことないです……い、一応テストでは学年一位をキープさせていただいておりますが」
「じゃあなおさら凄いじゃん! 私一位とか取ったことないよ!」
杏月に褒められた滝口くんは、まんざらでもなさそうに頬をかいた。



