──犬飼。
その名字に、私の耳がぴくりと動く。
だって、その名字は、最近何度も口にしてきたものだったから。
その場から去ろうとしていた私は少し怯みながら陰に隠れて、こっそりと様子を疑う。
大柄な男たちに囲まれ、アスファルトに力無く横たわっている人の顔に目を凝らせば、
「……っ、!」
その人は間違いなく、私の知る犬飼くんだった。
私の目に狂いはない。
顔中、殴られたのか青黒いあざがあって、今にも意識を失いかけている様子だ。
あの日、あの雨の日に見た犬飼くんを思い出す。
……もしかして、あの日もこの人たちにやられて?
「おい、冬樹さんが訊いてるんだから早く答えろよ」
派手な金髪頭をした長い前髪の男が犬飼くんの背中を強く蹴った。



