ただただ気まずい空気が流れ続ける。
私は遂に耐えきれなくなって、心にもないことを口走ってしまった。
「……っ、しばらくの間だけだからね」
「……、え?」
「だーかーらっ! 私にかくまってほしいんでしょ?」
私がそう訊くと、犬飼くんの表情から影が消え、瞬く間に目に光が戻ってきた。
「……っ、うん!」
犬飼くんの瞳が潤んで見えたのは、私の気のせいだろうか。
深くは考えないことにして、とりあえず息の詰まる沈黙を終わらせられたことに安堵した。
──ここまでが、私が犬飼くんを家に泊めることになった経緯。
「ほぇ~、そうだったのかぁ。でも、なんだろ。犬飼くんの事情が気になって仕方ないんだけど!」
私の話を聞き終えた杏月は興奮気味にそう言った。私は一応、私の家での犬飼くんと学校での犬飼くんが全くの別人であることは言わなかった。
杏月や他の子たちにとって、犬飼くんは冷徹王子キャラのような人らしいし。
「まあね。私もそう思うけど、きっと犬飼くんも話したくない内容だろうし」



