犬飼くんは難しそうな顔をして言葉を詰まらせている。
「はい、これで話はおしまい。今日泊めてもらうだけでも感謝しなさい」
私はソファから立ち上がって項垂れている犬飼くんの真横を通り過ぎ、洗面所に向かった。
後から遅れて駆け寄って来る足音が耳に入る。
「うおっ」
「犬飼くん、私お風呂に入るから。ここから先は立ち入り禁止」
洗面所に入る前、急に足を止めた私の背中に犬飼くんがぶつかった。
振り返り、犬飼くんに鋭い視線を向けた私は容赦なく洗面所の扉を閉めた。
私がお風呂から上がってくるまでの一時間。
そろそろ犬飼くんの無茶な考えも変わっただろうと期待してリビングに向かった先には、無表情で床に正座をしている犬飼くんが。
何だか話しかけられる雰囲気じゃなくて、私は恐る恐るリビングに入った。
犬飼くんは私の存在に気づいていないみたいだ。
何やら深刻そうな顔をして、だんまりを突き通している。
……まるで、学校で見た犬飼くんみたい。



