たらふく食べた後はまた長時間並んでアトラクションに乗り、隣ではしゃぐ犬飼くんの声を聞きながら非日常を過ごした。
園内を出る時には私はまんざらでもなく楽しかったと思う自分がいることを自覚し、小さく吹き出した。
帰りの電車は満員で、人の圧に押し負けないように耐えていると、犬飼くんが私の前に回り込んできた。
「雨宮さん、大丈夫?」
私を守るように電車の扉に手をつき、そう問いかけてくる犬飼くん。
犬飼くんとほぼ全身が触れ合っているこの状況で、顔を上げて目を合わせるのは恥ずかしくてできなかった。
こくりと小さく頷いた私に、犬飼くんは「そっか」と安心したように返した。
「雨宮さん」
「……ん?」
「今日は俺の無理なお願いに付き合ってくれてありがとう」
帰り道。隣で歩く犬飼くんがそんなことを言った。
「……まあ、うん」
疲れたせいで明らかに口数が少なくなった私を気遣ってか、犬飼くんがそれ以上話しかけてくることはなかった。



