人混みに軽い吐き気がして、私は帽子を視界が隠れるくらい深く被った。
「雨宮さん、何乗る!? 多すぎて俺分っかんねぇ!!」
「う、うるさい……」
耳元で叫ばれて、冗談抜きで鼓膜が破れる思いがした。
「あ、ごめん。俺、ここ初めてくるからテンション上がっちゃって……」
犬飼くんは申し訳無さそうに眉を下げて後頭部をかいた。
私は犬飼くんが言ったことが意外で、思わず目を見開いた。
「え、そうだったの?」
「うん。うち、両親仲そんなに良くなくてさ。昔から家族旅行とかは一度も行ったことがない」
歩きながら何でもないように言う犬飼くんをまじまじと見た。
「……そっ、か。行ってみたいなとか、思ったりするの?」



