「あ、うん。ちょっと待って、これまで……」
犬飼くんはテレビのニュースに気を取られている様子だった。その横顔があまりにも真剣で、私は大人しく口を閉じて待った。
〈──次のニュースです。昨夜、都内を暴れまわっていた〝白龍〟と呼ばれる暴走族に所属している十七歳の少年が都内に住む七十代女性をバイクで引き、大きな怪我を負わせました。
その後、その少年は逃走しましたが、パチンコ店にいる所を逮捕されました───…〉
テレビにはその時の映像が映り、私は何気なく興味を引かれてそのニュースに聞き入った。
だけどすぐにテレビの画面が真っ暗になる。犬飼くんが消したのだ。
「行こっか」
さっきの真剣な表情の犬飼くんはどこへやら、目の前には少し無理に浮かべた笑顔があった。
「……うん」
私はそれを不思議に思いながら、だけどわざわざ訊ねることはなかった。
電車に三十分ほど揺られると、目的のテーマパークに着いた。
犬飼くんは隣でウキウキとしていて、私は少し安心した。
あのニュースを聞いてからというもの、家での様子がおかしかったから……。



