半熟のスクランブルエッグが口の中でとろりと溶けて、ケチャップの甘い酸味との相乗効果であり得ないくらい美味な味が舌に広がる。
「まじ? やったね」
犬飼くんは嬉しそうに微笑んで、大きな口でトーストをかじった。
朝食を食べ終わったら洗面所で並んで歯磨きをする。
時々お互いの肩が触れ合って、不可抗力で心臓がドキッと跳ねる。
……別にこれに恋愛的な意味は何もないし。
と言い訳をする。
歯磨きを終えたら、いつもだったら順番に顔を洗うのだけど犬飼くんはもう洗顔や着替えを済ませていたから、私は一人ゆっくりと身支度をした。
実は今日、強引な犬飼くんの頼みを断れずテーマパークに行くことになっているのだ。
私は昨日の私を恨めしく思った。
髪を高いところで一つに結び、動きやすいスキニーパンツの上に白のTシャツを着た。
「犬飼くん、準備終わったよ」
リビングでテレビを見ていた犬飼くんにそう声をかけた。



