「……あ、ありがと」
そう言うと、犬飼くんは満足したような笑みを浮かべた。
まるで犬飼くんの手のひらで転がされているようで、イライラしてしまう。
「もう寝るからあっち行って」
犬飼くんに背中を向けて目を閉じた。
犬飼くんからの反応はなく、数秒経って寝室から出ていく音がした。
私は一息ついてこれからのことを考える。
初めて出会った日から一週間が経った今も、犬飼くんは何食わぬ顔で私の家に居座り続けている。
私が何を言っても『あと一日泊めさせて』の一点張りで、正直手のつけようがなくて困ってるんだ。
これ以上犬飼くんを懐に入れることはできない。
仲良くなるなんて以てのほかだ。
解決策が出ない問題を悶々と考え続けているうちに睡魔に襲われて、深い眠りについた。
❥❥❥
翌朝、目を覚ましてリビングに行くと、何だか香ばしい匂いが鼻を突いた。
台所に人の気配があって、寝ぼけた目をこすり視線を向けるとそこにはエプロンを着た犬飼くんの姿があった。
「あ、雨宮さんおはよう」



