ワケありモテ男子をかくまうことになりました。



ここは危機を乗り切ったと喜んでもいいのに、犬飼くんの安心したような優しい微笑みを見たら、どこからか罪悪感が生まれる。


「……ねえ、犬飼くん。私、この通り熱があるでしょ? だから、今すぐにでも出て行ってくれると、」

「俺、出ていかないよ。雨宮さんの看病する」

「いや、だからさ。分からないかな、私が迷惑がってるってことに」


この人には、ちゃんとはっきり言わないと伝わらないんだ。


わたしの言葉を聞いて、一瞬口をつぐんだ犬飼くん。

それからベッドの側に置いてある丸椅子から立ち上がり、寝室から出ていった。

静まり返った寝室に一人取り残される私。

犬飼くんはもう帰ったかな、と思いベッドから降りようとしたところで、こちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。

私は慌ててベッドに戻り、布団を頭の上まで被る。


「雨宮さん、濡らしたタオル持ってきたよ」


椅子に座る気配がして、布団を首元まで下げた。


「そこまでしなくてもいいのに……」

「ここは素直にありがとうって言っときなよ」


優しく微笑んで、遠慮気味な手が顔に伸びる。ひんやりと冷えたタオルで顔を優しく拭かれる。