これ以上犬飼くんと二人きりでいるのは何だか気まずくて耐えきれないと思い、私は引きつった下手くそな笑みを浮かべていてバイバイと手を振った。


 最後に見た犬飼くんの耳がまだ赤かったからちょっと心配になったけれど、気にしない振りをして準備室の扉を開ける。


 私が出ていく前、犬飼くんが私の方を見て小さく「…ありがとう」というか細い声が聞こえた。