ちょっと眉が寄って、いつまでも私と目を合わせてくれない犬飼くんに、自分が不機嫌になっているのが分かる。



「もー、犬飼くん!いい加減こっち見てくれてもいいでしょっ」



 少しだけ優しい言葉を言っただけなのに、なぜか私のことを避けようとする謎なイケメン、犬飼くん。んん、こいつが分からん。分からなすぎる!


 犬飼くんの肩に手を置いて、グイッと強引に私の方へ向かした。すると……、犬飼くんの真っ赤に染まった表情と、泣きそうになっている瞳。



「……っ、」



 そんなものを、見てしまった。犬飼くんはビックリしたように息を詰まらせて、大きく見開かれた目で私を見ている。


 あちゃ……、これは見ちゃダメだったっぽい?


 今度は私が盛大に顔を逸らす番で、額からの冷や汗が止まらない。犬飼くんからの何とも言えぬ気まずすぎる視線に、肩からゆっくりと手を離す。



「な、なんかごめん……」


「だ、大丈夫…」