聞こえてきた、男の子の低い声。


眉間にグッと皺を寄せて、うっすらと瞳を開け、私の方へ視線を寄越した彼。


人ん家の煉瓦の壁に背中を預けてもたれかかるようにして倒れていた彼は、今までずっと俯いていた顔を今ようやく現した。



「うわ、きれー……」

「………」



意識があるのかないのか定かではない男の子が、私を見つめた瞬間そんな言葉を口にした。


そんな突然の出来事に何て返したらいいか分からない私は無表情を続ける。


あの、すみませんがあなたの方が女子の私より何倍もきれーかと。

と、本当に真顔で答えたくなるくらい、目の前の彼は整いすぎた容姿をしていた。



「あの、大丈夫なんですか?」

「……え、俺?」

「はい、俺です」



致して真面目にそうオウム返しした私に、彼が一瞬呆然とした顔をして、「ふはっ…!」と面白そうに吹き出した。