「ゆい、それって犬飼くんのことが好きってことじゃない?」
〝好き〟
そんなワードにまた反応してしまう。
「そ、そんなこと……っ」
そんなことない。
そう言おうとしたけれど、私は途中で口をつぐんだ。
犬飼くんと過ごしたこれまでの日々が頭の中で一気に再生されて、頬が熱くなるのを感じる。
「ない、とは言い切れないんじゃない?」
杏月はいたずらっぽく笑いながら言った。
私が犬飼くんのことを、好き……。
犬飼くんに対する気持ちを初めて考えてみる。
私は今まで恋愛しちゃいけないという考えで頭がいっぱいだったけれど、今は──。
「──好き、なのかもしれない」
正直な自分の気持ちを考えた時、私の口からそんな言葉が出てきた。
犬飼くんのことを考えると胸が温かくなるし、さっき女の子たちに囲まれている犬飼くんを見てモヤッとした気持ちの正体は──嫉妬だったんだ。
そう言った私に、杏月が「きゃ〜!♡」と悲鳴を上げて嬉しそうな表情で私を見た。
「ゆい、幸せになってね」
そう言われて、私は胸を打たれる。
「うん、あ、でも。……犬飼くんが私と同じ気持ちなのかは分からないけどね」



