【瑛人side】
あの日は怖いくらいの快晴だった。
兄のバイクの後ろに乗り、爽やかな空気を全身に浴びた。
『ねえ、お兄ちゃん。今日はこっちの道に行ってみたい』
その一言で、あんなにもむごい結末になるだなんて、あの時の幼い俺は想像さえしていなかった。
目を瞑れば、ブルンブルンと地響きに似たバイクのエンジン音が聞こえてくる。
「……っおれが、あんなことを言ったから、だから、」
過呼吸になりながらもゆいにあの日のことを伝える。
俺の兄は、当時白龍と呼ばれる暴走族の一員だった。
特服を着てバイクを走らせる兄に憧れた俺は、無理を言ってバイクに乗らせてもらった。
兄は俺の言ったことを聞き入れてくれて、進路を変更した。
『瑛人、しっかり掴まってろよ。今から飛ばすからな』
振り向いた兄が唇の口角を上げてにやりと笑った。
他のメンバーたちも兄に続いて速度を上げる。
物凄いスピードでバイクを走らせ、信号が見えてきた。
それでも白龍のみんなはバイクの速度を落とさない。
信号が赤に変わり、普通なら止まらないといけなかったのに──。
『兄ちゃ、人が──…』
兄は今にも横断歩道を渡ろうとしている人の存在に気づかないまま、信号無視をした──。



