「……犬飼くん。国語、全問間違いなんだけどどういうこと? さっきあんなに自信満々に言ってたあれは何だったの?」
私は真顔でそう問い詰めた。迫りくる私に恐れをなした犬飼くんは目を泳がせて何とか言い訳を考えようと思考している。
「い、いや……あのですね。俺、文系科目がほんっとうにダメでして」
後頭部をポリポリ掻きながら項垂れる犬飼くんに私は小さくため息をついて言った。
「分かった、文系科目は私が一から教えるから」
「神様……! いや、女神様!」
両手を胸の前で組んで、目をキラキラさせてそう言うものだから、私は呆れて何も言えなくなった。
勉強開始から二時間。二人とも徐々に集中力が切れてきた頃、犬飼くんが「ちょっと眠気で視界がぼやける……眼鏡取ってくるね」と立ち上がった。
ダイニングの丸テーブルの上は私と犬飼くんの勉強道具で散乱状態だ。
犬飼くんが眼鏡を取りに行っている間、私はいらない教材は縦に積んで机上をある程度綺麗に片した。
「は〜疲れた」
眼鏡を手にダイニングに戻ってきた犬飼くんは、床にドスンッと腰を下ろした。
私は難しい数学の問題を解き始めたけれど、すぐに分からなくなって悶々としていると、犬飼くんが私の手元を覗き込んで言った。
「ここ、ムズいよね。俺が教えようか?」
「え。犬飼くん分かるの?」
「うん。俺、理系はいけるから」



