「あれは、私のお節介が過ぎただけで、犬飼くんは悪くないよ……。それに私が犬飼くんをかくまう理由は、使命感っていう名の薄汚れた偽善なの」
人との交流を拒んできた私が、ここまで犬飼くんと親密な関係になってしまったのは不本意だ。
あの日、ただ助けなきゃと思った自分を恨んではいない。
けれど、いつか犬飼くんとの名前のつけられない関係に終わりを告げなきゃいけないと頭の片隅でいつも思っている。
「それでも、雨宮さんは優しすぎるよ。俺、誰かにこんなにも気にかけてもらったことなくて、すげえ嬉しい」
エレベーターから降りる前、太陽のように曇りない表情で笑った犬飼くんがやけに輝いて瞳に映って、しばらく頭から離れなかった。
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犬飼くんが私の家に再びやって来てから一週間が経った。
今のところ、犬飼くんはあの男たちに見つからずに安全に過ごすことができているけれど、それがいつまで続いてくれるのかは分からない。
「犬飼くん。今から肉じゃが作るんだけど、何か苦手なものとかない?」
「ない。てか俺も一緒に作る!」
「犬飼くん、中間テストの勉強しなくて大丈夫なの?」
「うん! 大丈夫に決まってるでしょ」
そう自信満々に言って親指を立てた犬飼くんだけど……。夕飯を食べ終わり、お互い入浴も済ませていざテスト勉強を始めると。



