「えぇ、いいよ。多分歩けるから」
私は犬飼くんのサポートを受けながら立ち上がった。けれど、途端にズキンッと傷が痛んだ。
「……本当に自力で歩ける?」
「……無理そうデス」
犬飼くんにおぶられて、キャンプファイヤーの会場まで向かう。この年で誰かにおんぶされるなんて想像さえしてなくて、情けなさで泣けてくる。
「犬飼くん……ごめんね。私、重いでしょ」
「ううん、全然。むしろ軽すぎるぐらいだよ」
犬飼くんの腕が私の太ももに回っている。細身なのに、女子とは違う筋肉のついた腕。
ゼロ距離だということに今更気づき、顔に熱が集まる。今が夜だったのが救いだった。
「ここまででいいよ、」
沢山の生徒が集まる会場から死角の所でそう言った。
「いや、俺たちの班のシートのとこまで運ぶよ」
「でも、犬飼くん……私といるとこ見られたら、」
犬飼くんの学校生活に、多少なりとも影響を及ぼすのではないだろうか。
そんな心配をする私に、犬飼くんは力なく笑って言った。
「大丈夫。それにこれが、俺の未来への第一歩って感じがしてるんだ」
犬飼くんはニカッと笑って私を担ぎ直し、沢山の生徒で賑わう会場に足を踏み出した。
そのことが犬飼くんにとって何を示すのかは私には分からなかったけれど、きっと何か大切なことなのだろうと思った。
❥❥❥
私をおぶって現れた犬飼くんに、たちまち周囲の目が向けられる。



