トウシューズを履いた理緒は、すっかりバレリーナに見えていた。


理緒は「全然下手だよ」と言っているが、とんでもなく足が高く上がっている。

理緒はバレエをやり始めて、3年目となっていた。

レッスンが終わり、生徒たちがレベランスと言う、お辞儀をしているとき、理緒と目が合った。

亮二はガラス張りのドアから「やぁ」と声をかけた。

理緒は「亮二さん来てたの?見てたの?恥ずかしい」と、顔を赤くしていた。

緑川先生が亮二に近づいてきて
「お父さんですか?理緒さん、頑張ってますよ」
と声をかけてきた。
お父さんか…、まぁ、確かにそうなのだが…。
理緒は更衣室に入って、すぐレオタードから、ワンピースに着替えて亮二のところへやってきた。

亮二が「お疲れ様、お腹すいただろ?サーティワンにでも行く?」とアイスが好きな理緒を誘ったが
「アイスはダメ!太っちゃうから!」と言いながらも、ぐぅーと、理緒のお腹が鳴った。

「やっぱりお腹、すいてるじゃないか。何かたべよう」そう言って、夕飯の食材を買いに、ショッピングモールへ行った。

たこ焼きのいい香りがしてきたので、亮二は、たこ焼きをひとパック買い、「栄養補給しなきゃな」と
理緒と一緒に食べることにした。

理緒がアツアツのたこ焼きを、美味しそうに頬張った。理緒が2個食べて、残りの4個は亮二が食べた。

こんな普通の生活が、亮二には幸せだったし、理緒もうれしそうだった。

帰宅したあと「亮二さん、これ…」と、理緒がスマホを差し出した。

理緒はいつの間にかインスタグラムを始めていたようで、そこには、バレエ姿の理緒やトゥシューズが写っていた。

そこで理緒の中学生の同級生からメッセージが届いたという。

理緒のバレエ姿やトウシューズなどの写真を見て
「是非、理緒ちゃんに会いたい!素敵です!」
というメッセージが届いていた。

「いいじゃないか、たまには遊んで来ればいい」

「…そうでだね、久しぶりに会ってみようかな…」