「おめでとう、空。
優希と付き合うことになったんだって?」

愛理彩が光のない黒い瞳をして笑う。

私は罪悪感を覚えて俯いた。

「なんでソラが罪悪感を覚えるのさ」

そう口を開いたミコトを睨みつける。 
それから、愛理彩に向き直った。

「ごめん、愛理彩。愛理彩の彼氏
取るような真似をして」

「ふふふっ、何言ってるの。空は悪くない。
略奪したわけじゃないんだから謝らないでよ」

愛理彩が屈託のない笑顔を浮かべた。

またも違和感を覚える。

好きな人を奪われて無邪気に笑って
いられるだろうか。

もしかして二人とも、ミコトに操られてる?

私は横にいるミコトを見た。

彼は知らんぷりをして宙を浮きながら
教室を出ていく。

あいつ……。

「愛理彩、ホントにごめんね。
私トイレに行ってくる」

私は教室を出てミコトを追いかけた。

「待ちなさいよ、ミコト!」

声を上げるとミコトはゆっくり振り向いた。

「優希と愛理彩の様子が変なのはあなたのせい?」

怒りを滲ませる。

どうして、こんなことを。

なぜ、私の幸せに執着するの。

「……なんでソラの幸せに執着するか、か。
僕がソラを幸せに出来なかったからだよ」

ミコトは悲しそうに笑う。

どういうこと……?

ミコトは私の心の声には答えずに去っていった。

『僕がソラを幸せに出来なかったからだよ』

私はその言葉の意味が分からずに、
その場に立ち尽くしたのだった。