放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると
窓の外を見ている男子がいた。
優希だ。
後ろ姿だけで、分かった。
わたしは声を掛けるべきか迷っていると優希が
振り向き目が合った。
「あ、空」
わたしは苦笑いを浮かべて、優希の隣に並んだ。
「聞いたよ。別れたって」
「あぁ……」
「私、信じてるよ。
優希は浮気なんかしない。
愛理彩の勘違い。そうでしょ?」
「……俺、ホントに愛理彩のこと好きなんだ。
だから、愛理彩に勘違いされるのホント辛いよ」
優希の瞳が潤んでいる。
胸が切なくなった。
「今からでも弁解して愛理彩とよりを戻しなよ」
そう説得すると優希はこっちを向いた。
目に光がない。
「俺のこと、心配?」
「当然だよ。友達なんだから」
「あぁ、やっと気づいた。
俺を支えてくれるのは空だけだって」
恍惚とした表情を浮かべる優希に違和感を覚えた。
「どうしたの。優希なんか変だよ」
「好きだよ、空」
私はその言葉に息を呑む。
「何言って……」
強く手を引かれ抱きしめられる。
「俺のものになってよ、空」
不覚にも胸がときめいた。
私は抱きしめられたまま、何も言えなかった。
いや、言わなかった。
私は欲望のままに優希を抱きしめ返し頷いた。
違和感の正体に気付かぬまま。

