「ねぇ、知ってる? 
隣のクラスの永井さんと東くんが別れたらしいよ」

「えっ、マジで? ちょーラブラブだったのに」

「浮気されたとかで別れたんだって」

廊下を歩いているとそんな声が聞こえてくる。

「えっ?」

私は思わず振り向いた。

すると、噂をしていた女の子は「あっ」
という顔をし、気まずそうな表情になった。

「それ、本当なの?!」

「う、うん。永井さんたちには言わないでね。
東くんが浮気したんだって……」

嘘だ。
優希が浮気するはずない。

『僕が願いを叶えてあげる』

冗談だと思ってたけどもしかして。

私は頭上を見上げた。

あなたが二人を別れさせたの!?

ミコトはニッコリ笑って頷く。

そんなこと、望んでない。

「なんで、そんなことをしたのよ!!」

周囲の人たちが一斉にこちらを向いた。

「え? だって二人が別れたらいいのに
って思ってたでしょ?」

キョトンとするミコト。

私は歯を食いしばり「ありがとう」と彼女たちに言って、誰もいない廊下に向かって走った。

ミコトはわたしにしか見えないから
怒ったら変に思われる。

「勝手なことしないで!!」

ミコトを睨みつける。

「なんで? それが本当の願いでしょ?」

カチンとした。

「二人は私の大切な人よ。傷つけることは許さない。
二人が別れたら良いのにって思ったのは……
本当のこと。だけど二人が傷つく姿は見たくない」
真剣にミコトの目を見つめる。

「ソラの幸せは、二人の幸せを見ることなの?」

「それは……」

二人が幸せそうにしてるのは胸が痛む。

だけど、わたしは二人に幸せでいてほしい。

私は「そうよ」と頷いた。
ミコトは「ふーん」とつまらなさそうに
言うとどこかへ行ってしまった。

ミコトは、どうして私の
願いを叶えたがるんだろう。

不思議に思いながらも、もうすぐ
チャイムが鳴ることに気づき走り出した。