家の周りは静かだった。

もしかしたら警官が大勢いるかもしれないという私の予想を大きく裏切り。


考えてみれば、ゼロが警察の上層部しか知らないと言っていたのだから当然か。


遠くで犬の鳴き声が聞こえるいつもと変わらない平和で穏やかな夜。


この家の娘に誘拐騒動があるとは、誰も思わないだろう。


「ただいま……」


けれど、一歩家の中に入れば。

様子がいつもと違うことは空気で悟った。


広い玄関に並べられた、見慣れない無数の靴。


「お、お嬢様っ!」


お手伝いさんが飛び出してきて、卒倒しそうになりながら私を見る。


「奥様、奥様~~~っ!」


そして血相を変えて慌てふためきながら入っていくリビングに続けば、中は想像通りの光景が広がっていた。