初めこそナイフで脅されて怖かったけれど、実際危害を加えられたわけでもないし。
誘拐犯のくせに誘拐犯らしくなく、むしろこれが普通の高校生の放課後なのかと思えるような時間だった。
少なくとも、カラオケにいたときよりも。
「俺たちに協力してくれるってこと?」
前のめりになって確認してくる希璃人。
「まあ……」
「へえ……お嬢サマもいろいろと闇が深そうだな」
凌士が目を細め、面白そうに口角を上げた。
図星過ぎてなにも言えず後ろに目をやれば、ゼロは私の言葉には耳も貸さずスマホと向き合っていた。
そんな姿をぼうっと見つめて。
「えっ……」
一気に頭が冴えたのは、あるものが目に入ったから。
あれは、まさか……。
動揺して思わず声が出たけれど。
「撤収だ」
その声は、嵐によってかき消された。



