「……はい」
私を拉致した時から一貫して張り詰めた雰囲気を崩すことない彼に、忘れかけていた恐怖が蘇ってくる。
彼に限っては、サングラスまでかけている周到さ。重く雑に下ろした前髪は、素顔を見られないようにわざとそうしているかのよう。
「まあまあ、かたいこと言うなって、ゼロも食う?」
希璃人がテーブルの上に乗せられた弁当を手にとるけど、「いらない」と即座に声が返ってくる。
ゼロ?
これが彼の名前なんだろうか。
「2時間。まだどこも動きはなみたいだ」
ゼロと呼ばれた彼は、嵐に向かって神妙に話し出す。
「そうか」
嵐は顎に手を当てて険しい表情。



