「そんなの当たらないね」




颯馬くんは、円を描いた水を想起させる壁画アートの前で、軽く笑って風を吹かせた。




「あ、ずるい!」


「ウォーターパークだから他の魔法使っちゃいけないって決まりはないし」


「そ、そうだけどっ」




真夏には似合わない、だからこそよく映える黒いTシャツには、シミひとつできていない。

なんだか悔しい思いをして、むぅ、と唇を尖らせた。




「何それ、キス待ち顔?」


「へっ!?」


「隙あり」




颯馬くんはニヤッと笑って、霧状の水を私の顔に浴びせた。




「ひゃあっ」


「僕、遊ばれるより遊ぶ方が好きだから。……さっきみたいな可愛い顔は、僕しかいないとこで見せてよ」




顔についた水を拭っていると、颯馬くんは私の目を覗き込むようにして、悪戯に微笑んだのだった。




fin.