涼介「よし、お祝いだ! 三人で昼飯食べよう如月さん!」
千華「それはいいけど、あの、名前! ……教えてもらっても良い?」
涼介「お、俺、如月さんに覚えられてねぇの……?」

 ガーン、とまたしてもショックを受けた涼介。慌てて千華は、弁解する。

千華「ご、ごめんねっ。まだクラス全員の名前を覚えてなくて」
涼介「いや……。俺が一方的に真尋から話を聞いて、如月さんを知ってたってのもあるし! 俺は藤田涼介、真尋の親友やってます! よろしくね、如月さ〜ん」
千華「よろしく、藤田くん」
涼介「ん!」

 キラキラ笑顔で、親指をグッと千華に向けた涼介。

 
 ──しかし次の場面では、ずーんとした顔の涼介に。

涼介「……え、なんで俺だけここなの」

 涼介は、千華の机とくっつけて長机になった真尋の机の側面に座っていた。
 いわゆるお誕生日席だ。
 千華の机で向かい合う真尋達とは、机一個分遠く、悲しい席にいた。

真尋「如月さんの隣なんて、許されるわけがないだろう?」

 初めは嬉々として千華の隣に座ろうとした涼介だが、鋭い眼光の真尋に射止められ「お前はここだ」と言われたのが、例のお誕生日席だ。

涼介「せめて真尋の隣なら良いだろっ」
千華「そ、そうだよ御厨くん。さすがにそこは可哀想だし」
涼介「如月さんっ、女神か!」
真尋「お前のじゃない。俺の女神だ」
涼介「ケチー」

 ぷくーと頬を膨らまし、口を尖らせる涼介。

真尋「うるさいよ」
涼介「真尋がつーめーたーい」
真尋「如月さん、このゴミ捨ててきますね」

 ガタッと立ち上がり、涼介の首根っこを掴んだ真尋。

涼太「へ、ゴミって俺のこと!?」

 涼介の抗議に、片眉を上げ「他に誰が?」と言う真尋。

千華(この二人、仲がいいんだか悪いんだか……)

 二人のやりとりを見て遠い目をする千華だった。