キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─





「ははっ、…うん」



笑ってる…。

楽しそうに笑っている。

ああ、まだちょっとだけ苦しいかも。
まだちょっとだけ痛いかも。


ぜんぜん違う。

わたしに見せてくれた顔と、まったく。



「志音、……早く会いたい」



そんな顔をするんだ。
そんなふうに名前を呼ぶんだ。

普段でも魅力的な声をしているんだから、そこに甘さが加わるとすごいことになる。


シオン、って、琥珀くんが好きな子の名前だったりする…?


そういえばそうだった。

あなたには好きな子がいるんだったね。



「あれ?アララギは?」


「……琥珀くんは森林浴してる!俺たちでやろ!!」


「おー」



僕はいつも志音のことしか考えてないよ───、

そっと背中を向けて部屋に戻ろうとした瞬間、聞こえた彼の声。


あんなにも自分の気持ちを言える人だったんだと驚いた。

それか電話だからかな。

たとえ電話だとしても言われた側は嬉しいよ、あんなの。



「なんかさ、カンナって女に見えるときもあるよな」