「トランプっ!ねえやろうよー!」
楽器が触れなくて退屈そうなクラスメイトへ、わたしは新しい遊びを提案した。
修学旅行やお泊まり会の真骨頂と言えば、やっぱりトランプや枕投げだ。
そんなゲームやスマホばっかやってるな現代っ子…!!
「俺ババ抜きか神経衰弱しかできないけど!やろうやろうっ」
「大富豪がやりたいので俺パース」
「オレもパス~。目玉焼きトーストの食べ方が未だに納得いかないオレがそれでもぶっちぎりで好きな天空の城を目指す国民的アニメ映画の男キャラはパズ───」
「じゃあ琥珀くん呼んでくるから!ババ抜きに決定なっ、シャッフルしといて!」
「……あいつ日本語通じねーの?」
知らない通じない。
これが男だ、これが男子高校生なのだ。
だんだん分かってきたわたしは、男らしい強引さだけは身についていた。
「やっぱりここにいた!琥珀くんっ、これからみんなでトラン───…、」
「うん、僕は元気だよ。頼もムツミも変わらずうるさいね」
電話中、だと。
そこは昼間、一緒に鳥の声を聞いた縁側。
琥珀くんはスマートフォンを耳に当てて、見たことがないくらい優しい顔をしていた。
あの様子から家族と電話しているわけではないんだろうな…と察せれてしまうのは、わたしが女だからか。



