「こういう自然の音にさ、どの音階が使われてるかなって当てはめるのが好きなんだ」
それが神様の休息の取り方なのだと。
自然の音をそんなふうに見つめたことが無かったわたしは、せめて今だけでも琥珀くんと同じ景色を感じてみたかった。
ドレミファソラシドくらいならわたしにも分かる。
「あっ!今の音ってミじゃない?」
「…ソかな」
「えっ、……あ!これはドだっ」
「シのフラット」
面白いくらい当たらない…。
わたしの音感どうなってるんだろう…。
対する琥珀くんは絶対音感なんかを身につけていそうだ。
「…ふっ」
次から次に予想しては外れていくわたしの隣、柔らかな音が聞こえた。
わたしがこの人に恋をしていたことを気づかされたのは、振られた日。
彼本人から言われて、そのあとすぐに断られた。
初恋、だったんだろうな───…。
わたしが男の子で良かった。
こうしてまた話せるから、笑ってくれたから、男の子で良かったんだ。
「なあ、かなり降ってきてね…?これオレたち帰れんの?」



