まるで芸能人が混ざってるような感覚に近いかもしれない。
わたしにとってそれくらいの存在が、蘭 琥珀というひと。
「カンナ?おいボサッとしてバケツ落とすなよ」
「あっ、うん!」
いつもと違うワクワクやドキドキがあるのは私服姿だからだろうか。
よく見ると蝶が描かれたシックな柄シャツに黒スキニーパンツを合わせて、シンプルなシルバーネックレスがひとつ。
彼の特徴としてクラスメイトのほとんどが身に付けているピアスをしていないこと。
そんなわたしは半袖パーカーに動きやすいパラシュートパンツ、以上だ。
「琥珀くん!そろそろお昼ごはんだって!」
リノベーションされた和モダンな古民家内にある、広めの縁側。
日本庭園な風景を眺めていたその背中に、わたしは声をかけた。
「琥珀くん?」
「……鳥の声って、落ち着くよね」
「え、鳥…?あっ、確かにいっぱい鳴いてる!」
もうしばらく戻る気は無いみたいで、一緒に耳をすませてみる。
美味しいごはんに釣られたわたしと、きれいな森に釣られた琥珀くん。
わたしは彼の願いを優先させるように縁側に残った。



