キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─





夏休みに突入して、数日目。


わたしはとある男に呼び出されて、最寄り駅からバスで50分先にある避暑地へわざわざ足を運んでいた。

小さなリゾート地と話題のエリア内にある、この小規模ながらもオシャレな古民家にて。



(((騙したなムツミ……!!!)))



わたし含め男たちは、そいつを一斉に睨むことになる。


しらーっと視線を外した本人は口笛まで吹いていた。


この古民家はどうにもムツミの親戚が経営している宿泊施設らしく。

今日は休館日とのことで、揃った男子高校生たちがお呼ばれしたわけなんだけど…。



「じゃあよろしくね野郎たち!ピカピカにしちゃって!お礼としてお昼はもちろん出すから!」



やろうたち……。

人に物事を頼む態度として果たしてそれは正しいのだろうか。


呼ばれた理由:掃除をさせるため。


ということを、今になって理解した我々であった。



「琥珀、そっちの角持って。…せーのっ」



ただやっぱり現実感が湧かない。

わたしにとっての神様とは前よりも話す頻度は増えているというのに、どうしてこんなにも実感として無いんだろう。