…あぁ、もう。
ただでさえ泣いているのに、涙腺崩壊させないでほしい…!
「まぁ、それは過ぎた冗談だが、
一つだけ頼みがある」
芹沢さんは、僕に悪戯めいた笑みを浮かべて言った。
「アキの、晴れ姿が見たい」
『…は?』
とんでもない質問に、素で反応してしまった。
晴れ姿って…女の格好?!
「明後日、島原に行くのだが、
貴様の花魁姿を見たい」
「まぁ、芹沢はん、うちという者がありながら遊郭へ行きはるの!?」
「コイツの晴れ姿が見たいだけだ」
「えぇー!ズルいわ一人だけ!」
言い合いを始める二人。
僕が花魁になること前提で話をしないで!?
それに、明後日って。
例の暗殺日、じゃないか。
間近に迫りくる現実に、目の前が真っ暗になる感覚がした。
心臓を丸ごと握りつぶされる。
「良いだろう?一日くらい。
楽しい夢を、見させてくれ」
楽しい、夢…。
『………』
芹沢さんの目は、真っ直ぐに僕を見つめていた。
その瞳に隠された哀にハッとする。
まさか、気付いている…?
梅さんは気付いていないようだけれど。



