文久3年、真夏の8月が近づいてきた。

大阪に隊士募集を呼びかけた効果か、屯所はすっかり人が増えて賑やかになった。

人が増えるということは、僕の仕事も増すってことで。

そのため、今の僕は邪魔が入ると苛立ちやすい。


そんなある日の午後。


「アキさん」


眼の前には、新見とかいう芹沢さんの腰巾着が立ち塞がっていて。

絡まれたぁあ、最悪ー!


嫌な予感がしたので、とりあえず身構える。


『何なの、いきなり』

僕は、ムッと口をへの字にする。

コイツに敬意とか毛ほどもないから、敬語なんて遣わないからね。


「芹沢さんがあなたを呼んでいます」

なんか言ってるけど無視した。


え?新見を嫌う理由?幾らでもあるよ。


まず、爽やかさを醸し出す笑顔がどうにも胡散臭いんだよね。

コイツ、絶対性格ねじ曲がってるもん。


それと、新見は中性的な顔立ちの僕を舐るような目で見てくるから嫌い。

気持ち悪いし、不快でしかない。



『え?なんて?聞こえなかったぁ』


聞いていたけど、態とすっとぼけてやった。

だって行きたくないんだもん。





ていうか、大体芹沢さん僕を呼び過ぎなんだよ。

絶対僕を暇人か何かだと思ってるでしょ。

お生憎様、家事で忙しいんだよこっちはぁあ!



あと何でコイツばっかり仕向けてくるんだ。

もっとまともな奴を寄越せ…!