『んー?』


流石は忍、一流の動作だ。

気配もなく背後に立った男、山崎烝に僕は呑気な声で反応した。

やあっと姿を現したか。


それにしても、無害な僕にいきなり苦無突きつけるなんて酷いことをするなぁ。


『それで、僕の首を切ってどうするの?』


微動だにせず、至って無垢な質問を問うた。


山崎烝がそのまま苦無を横に引けば僕は断頭される。

ちゃんと再生するし死にはしないけど、痛いのは嫌だなぁ。


そんな想像をしていたら。

一切怯えたり、怖がったりしない僕に山南さんは訝しんでいるのに気づいた。

あ、こういう時は人間らしくすれば良かったのか。


心の中で反省した。


暫く、誰も何も言わない時間が経過して。


やがて、山崎烝は僕が敵ではないと判断したのか、僕の首からサッと苦無を取り下げた。


「…アンタ、変な奴やな」

『そう?』


僕は小さく笑うと、肩をすくめた。

喜ぶべきなのか分からないけど、
その言葉、良く言われるんだよね。


上から落ちてきた声に顔をあげると、全身真っ黒の衣装を身に纏った美丈夫の忍(顔半分しか見えない)と目が合ったのだった。