僕と山南さんのやり取りは続いた。
「…それで、貴女は間者なんですか?」
疑う目つきを崩さない山南さん。
対して、僕は余裕が滲んだ笑みを零す。
『間者なわけないですよ。
それに、僕を見張っているなら分かることでは?』
山崎烝、だっけ?
最近入ったらしい忍が僕を見張っているのは分かっている。
今もどこかで僕達を見ているんじゃないのかな。
屯所がガラ空きの今、怪しい僕を野放しになんてできないもんね?
多分、ていうか絶対にトシくんの命令だろう。
だって、あの優しい近藤さんが人をコソコソ探るような最低な命令するわけないもん。
寝ても覚めても天井からやたら視線を感じるから気味悪かったんだよねぇ。
最初から気付いてはいたけど、一々突っ込むのは面倒臭くて無視していた。
「…見張りに気付いていながら、何も言わなかったんですか」
驚きを通り越して、呆れ顔の山南さんに僕はニコリと笑う。
『知らぬが花、でしょう?』
「…貴女という人は、空恐ろしいですね」
もし、僕が間者だとしたなら、まず監察方を欺く行動をするはずだし。
何もしない僕は潔白なのですよ。
「アンタ、気付いとったんやね」
声と共に、首元にヒヤリと冷たい感触がした。



